生まれたばかりの肌は、まだなにも知らない。
はじめて外の空気に触れる。
はじめて誰かに抱かれる。
はじめて、布に包まれる。
そのとき肌にふれるものが、
やわらかいか、そうでないか。
赤ちゃんには、わからない。
けれど、からだは覚えている。
育児工房は、その「最初の一枚」をつくる工房です。
消えかけた編み機が、教えてくれたこと。
「吊天竺」という生地を知ったのは、ある偶然からでした。
旧式の吊り編み機。現代の高速な機械とは比べものにならないほど遅く、一日に編める量はわずか。効率を求める時代の流れのなかで、次々と姿を消していきました。
けれど、その機械が編む布に触れたとき、手が止まりました。
空気をそのまま閉じ込めたような、ふわりとした弾力。
引っ張ってもすぐに戻る、やさしい伸縮。
赤ちゃんの肌のために存在するような生地でした。
この布で、肌着をつくりたい。
そう思ったのが、育児工房のはじまりです。
綿花が「布」になるまでの、長い旅。
育児工房が使うのは、オーガニックコットンだけ。
化学薬品を使わず、三年以上かけて土壌を整えた畑で育った綿花です。
収穫された綿は、糸になり、生地になり、裁断され、縫われ、
ようやく一枚の肌着になる。
その旅路のどこにも、近道はありません。
手間がかかる。時間もかかる。
でも、それが赤ちゃんの肌に届くものならば、
かけた時間はぜんぶ、意味があると思っています。
吊天竺(つりてんじく)
空気を編んでいる、と言ったほうが近い。
吊り編み機は、糸に無理な力をかけません。
重力に逆らわず、ゆっくりと、糸の自然な「なりたい形」に任せて編んでいく。
だから、できあがった生地にはたっぷりの空気が残ります。
手にとると、ふわっと軽い。
引っ張ると、すっと伸びて、やさしく戻る。
この弾力は、赤ちゃんのどんな動きにも寄り添います。
腕を伸ばしても、足をバタバタしても、
布が赤ちゃんに合わせてくれる。逆ではなく。
そして洗うたびに、もっとやわらかくなる。
使い込むほどに馴染んでいく布は、今では本当に少なくなりました。
知多木綿ガーゼ
この土地の水が、この布を育てた。
愛知県・知多半島。
江戸時代から木綿の産地として知られるこの土地で、
育児工房のガーゼは生まれます。
知多の水でさらされた木綿は、独特のやわらかさを持ちます。
何層にも重ねた五重織ガーゼは、吸水性にすぐれ、
乾きも早い。沐浴布やハンカチ、スリーパーに姿を変え、
赤ちゃんの日常のそばにいます。
産地が変われば、布も変わる。
この土地でなければ生まれない手ざわりが、ここにあります。
その手仕事が、かたちになったもの。
すべて見るあなたが選んだものが、赤ちゃんの「あたりまえ」になる。
赤ちゃんは、自分で服を選べません。
肌にふれるもの、毎日からだを包むもの。
そのすべてを、誰かが「選んで」くれている。
だからこそ、その一枚に想いがこもっていたら。
素材を選んだ人の手が、丁寧であったなら。
それは赤ちゃんにとって、
いちばん最初の「あたりまえ」になります。
やわらかいことが、あたりまえ。
やさしいことが、あたりまえ。
育児工房がつくりたいのは、そういう「あたりまえ」です。